五島列島の「よかコミ!」にサークル参加の帰りは、フェリーで長崎へ。長崎で1泊を経て、翌日3月21日佐賀空港からLCC(春秋航空)で帰京の予定を組んでいた。
そんな中、大九州合同祭実行委員会(東方オンリー「大(9)州東方祭」や艦これオンリー「西海の暁」の主催元)が急きょ「Comic Stream petit in 佐賀01」開催します!などと言い出す。
…えーと、佐賀空港向かう途中で立ち寄れるよね、これ。
という訳で、当サークルは、急きょ「Comic Stream petit in 佐賀01」へのサークル参加を組み込んだw

会場は、JR佐賀駅から南にバスで10分の、佐賀市民会館。
この会場なら、帰りの佐賀空港行のバス停も徒歩5分。LCC春秋航空は14時30分佐賀空港発なので、最後まで会場にいる事が出来ないが、それでも13時までは会場にいられるという計算も立つ。
こうして上手く予定がはまり、3/20五島列島「よかコミ!」→3/21「Comic Stream petit in 佐賀01」連戦での参加が確定した。
同人誌即売会の世界においての九州は、その昔九州各地で一世を風靡していた同人誌即売会「COMIC NETWORK」の地盤であった。
佐賀・長崎・熊本等各地に地盤を築くものの、告知サイトを立ち上げないなど告知能力が弱く、他様々な理由から次第にサークル参加数も減少。ジリ貧に陥っていた。
福岡市内でも、昔は福岡ドームにて1000sp規模の即売会を開き栄華を誇っていたが、福岡ドームを撤退すると急転落。僅か1年で1000spが数十spにまで落ち込む展開となり、最終的には福岡自体を撤退した。
他の地域でも、長崎・熊本・佐賀の3地域では、地域密着の即売会としてまあまあ安定して続いてはいたが、これらの地域でも、2015年までに活動を休止した模様だ。(webも無く記録も残っていない。人伝でしか聞いてないので、正確なところまでは把握しきれていないが…今活動していないのは間違いないと思う)

すなわち、現在の佐賀において、「COMIC NETWORK」終焉後、定期・継続開催の同人誌即売会が存在しない、という状況である。
これが、「Comic Stream petit in 佐賀01」が立ち上がった背景となる。
実際、開会時には、「佐賀は即売会が無いので、一度やってみよう」と大九州合同祭実行委員会の代表であるチャンコ増田氏が挨拶されている。


佐賀で開催される同人誌即売会の会場としては、佐賀駅から北に約2km。「佐賀市文化会館」での開催が多かった。「COMIC NETWORK」時代も、この会場が起用されてきた。
しかし今回の「Comic Stream」は、「佐賀市文化会館」ではなく、「佐賀市民会館」を起用。この会場は佐賀駅から南に約2km。佐賀城や佐嘉神社にもほど近い、繁華街・オフィス街の会場である。
聞くところによると、随分昔(15年以上前?)には即売会会場として起用された事もあったらしいが、21世紀に入ってからは使われた形跡が殆ど見られない。「市民会館」は、40spぐらいしかキャパシティの無い小さな会場なので、やはり100sp入る「文化会館」の方が使い勝手が良いのだろう。

ちなみに、この佐賀市民会館。耐震度不足に伴い、2016年4月からは休館するとの由。休館前の滑り込みで会場を押さえ、催事を開いた、という構図である。
★参考リンク・佐賀新聞「佐賀市民会館16年休館へ 耐震不足、改修困難」(2014年09月26日)


つまり、普段使う「文化会館」を使わず、敢えて「市民会館」を使った背景には、小さい規模を想定して、試験的にイベントを立ち上げてみよう。そういう意図があったと思う。
イベント名にも「petit」(プチ)の語が入っている事も、この意図を裏付けているだろう。

コンセプトは、「コンパクト」かつ「ローコスト」であろう。小規模で、サークル参加費も抑える代わり、カタログを省略し、簡易リーフレットでの対応。サークル案内の郵送も省き、全て案内はメールベースとしている。
これまでの「COMIC NETWORK」は、カタログ代別途購入ながら、サークル参加費を1000円程度としているが、今回の「Comic Stream」がサークル参加費を抑えたのも、これを意識しての事だろう。普段の「大九州合同祭」なら4500円前後だが、これをカタログ(リーフレット)代込2000円とし、「COMIC NETWORK」に近づけている。

これまで前例の無いやり方であり、試行錯誤しつつの運営方法なのは理解するが、それゆえ幾つか粗が目についてしまったので、次回以降の改善に供していただきたく指摘したい。

サークル机上には、自サークルを示す目印となる、サークルカットなりサークルスペースナンバーを記すシールなりが張り付けられているのが通例だ。これが貼っていないと、分かりにくいのみならず、サークルスペースの場所を勘違いするサークルも出てくるなど、トラブルの元である。
このぐらいの事は、普段の合同祭も当然やっている事なので、正直「らしくない」ミスだったように思える。
(とは言え、経験豊富なイベンターでも、これ、たまに度忘れする事あるみたいで…w)


加えてもう一つ。「コンセプト・ローコスト」の結果、A4サイズのコピー紙1枚両面に落とし込んで、リーフレット化するのは、確かに一つの方法だろう。
しかし、サークルにサークルカットを描かせて、掲載するサイズが、これは無いんじゃないかと思う(苦笑)

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…サークルカットってのはなー、【アイコン】じゃねーぞwおい
手間と費用を掛けずにというのは理解するが、このサイズだと、流石にせっかく力入れて描いたサークルに失礼じゃないかと…
解決策としては、サークルカットは普段の即売会並のサイズで掲載。その分割く紙面の量は増えA4サイズ両面でも収まり切れないが、B4両面に印刷しての二つ折りにして紙面の量を増やせば良い。そうすればサークルカットも浮かばれるし、コストも増えずに済む。


小言はこのぐらいにして、当日の様子をレポートさせていただきたい。
初動は100人ぐらい。彼らが普段手掛けてる「大9州東方祭」「西海の暁」等に比べれば大した数字ではないのかもしれないが、佐賀で地元に根差したオールジャンルとして考えるならば、寧ろ他の即売会より人を集めていると思われる。

サークル数も21サークル38spとそんな多くは無い。
ぶっちゃけ、数年前に佐賀の「COMIC NETWORK」を訪れた時は60spぐらいだったので、やはり普段の地元オールジャンルに比べれば少ないと思う。ただ、「Comic Stream petit in 佐賀01」は、良くある地場のオールジャンルではなく、「男性向け中心オールジャンル」の同人誌即売会。女性向けに比べ規模の劣る男性向けで38spなら、上出来ではないか。

ジャンル傾向としては、艦これ6・東方2・評論2。他は1サークル1ジャンルの様相。
オンリーだと東方に集まるが、オールジャンルだと艦これに流れる昨今の傾向、そのままの展開か。
数はごく少数だが、女性向け文脈のジャンル(刀剣乱舞・おそ松さんなど)での参加も見られた。地元の女性向けジャンルのサークルさんが、地元のイベントだからと足を運んだのだろう。

数字的には順当だし、一般参加者も、佐賀在住の若い学生クラスを中心にそこそこ来場。
男性向けオールジャンルとして見るならば、順当な立ち上がりであるかのように映った。

…ただ、大九州合同祭代表でもあるチャンコ増田氏は、この結果に満足していない。
「人の入りが少ない」とおっしゃって、結構渋い顔をされていた。
確かに、参加サークルの売り上げが上がってホクホクにならなければ、次来てくれる事は無いだろう、というお考えはよく分かる。男性向けサークル、特に(チャンコ氏もそうだが)グッズサークルは、売り上げに相当シビアなのも分かる。
だからこそ「大(9)州東方祭」では、そういうサークルの気持ちに寄り添ったがゆえに、一般参加者を多く集め、それがサークルの売上向上に繋がった。そしてそれがサークルの支持を集め、多くの参加サークルを集めた。結果、異例の大成功を収めた、という構図だ。

そうなると、チャンコ氏の目指す方向性に矛盾が生じてくる。
チャンコ氏が「Comic Stream petit in 佐賀01」の開催を通じて目指す方向性は、以下の各要素に分解できると思う。すなわち、以下の通りとなる。

(1)即売会皆無、同人不毛の地たる佐賀に、新しい場を立ち上げたい
(2)場の盛り上げ(サークル・一般参加者増強、サークル売上増強)
(3)「お試し開催」的な要素を伴いつつ、男性向けイベントで佐賀に進出


先ず、(1)の要素…「佐賀には即売会が無いから新たに場を立ち上げた」というお考え。この理念は私も支持し応援する。
だが、即売会に飢えているのは、男性向けのジャンルのサークル者よりも、寧ろ女性向けジャンルの人達だろう。実際、「COMIC NETWORK」時代も、過半数以上が、若い女の子の参加である。
女の子達・女性向けジャンルの方々が「場」に飢えているのに、その処方箋が(3)の「男性向けイベント立ち上げました!」という部分は、流石にずれているような気がする。

(2)の要素「場の盛り上げ」を考えるのならば、二つの方法がある。
一つは、「大(9)州東方祭in佐賀」なり「西海の暁in佐賀」なりを併催。サークルや一般を集められる東方オンリー/艦これオンリーというコンテンツ、自身の得意分野で勝負を仕掛けるのが良い。いつものように、同人音楽サークルを呼んでのライブをやっても良いだろう。
もう一つは、先述のように男性向けよりも女性向けの方が市場が広いのだから、女性向けジャンルの取込にも力を入れ、サークルをガンガン集める。
しかし今回は、(3)の「お試し開催」で40sp規模の「男性向けイベント」だ。「場の盛り上げ」を考え、あれだけ「人が来ない」と渋い顔をしていた割には、当初時点の開催コンセプトが人の集まらない設定になっており、矛盾を感じさせる。


私はこの「Comic Stream petit in 佐賀01」に参加して、「思考が少しブレ気味」と感じた。
これは、相反する(1)と(2)とを、或いは(1)と(3)とを、同時に目指そうとしているからだ。

ここは少し、もう少し矛盾しないような「方向性」を、腹くくって定めるべきだと思う。
主催氏が目指す方向性としては、以下3つが考えられるだろう。

(甲案)佐賀で女性向け中心オールジャンルの開催を目指す

(1)の要素を優先し、「サークル集め」という意味で(2)の要素も盛り込む代わり、(3)の要素を切り捨てる考え方だ。
これまで男性向けイベントの開催を通じ得たノウハウを一度捨てねばならないし、腐女子界隈の流儀も身に着ける必要がある。告知も、これまで眼中になかったであろうスタジオYOUのオンリーイベントや、福岡のコミックシティ等、女性陣が多く参加するイベントに注力する必要がある。これまでの取組で培われたイベント運営のオペレーションを、根本的に変えねばならず、負担も大きい。

(乙案)「大(9)州」「合同祭」のようなお祭りを佐賀に持ち込む

(2)の「場を盛り上げる」という方向性に特化するやり方。
今までのノウハウをダイレクトに生かせ、人を集める・場を盛り上げるという意味で、一番結果を出せるだろう。遠征組の参加も、今以上に見込める。
ただ、特定ジャンル色が強くなるので、(1)の要素「佐賀同人者の受け皿」を目指すのは諦めた方が良い。サークル・一般来場者も多数となるので、(3)の要素にあるような「小規模イベント」「お試し開催」のノリも諦めた方が良いだろう。

(丙案)佐賀で地域密着の男性受けオールジャンルイベントを開催

この方法だと、今ぐらいの規模(40sp前後)で地道に継続するという形。
ただ、女性向けも含めた受け皿となる事((1)の要素)や、多人数集めて派手にやる事((2)の要素)は諦める必要がある。長い間辛抱強く、継続して開催する中で、徐々に知名度と信頼を上げていくしかない。
(1)(2)の要素を切り捨て、(3)の要素を強調したもの、とも言えるだろう。
また、この方向性において適正規模の会場である「佐賀市市民会館」はもう使えない。「文化会館」だと少し大きすぎる。もっと別な会場を探す必要もあるだろう。


行きつくところ、(1)〜(3)の要素全てを追い求める事には矛盾が生じるのだから、この3要素の中のどれかを強調。残り2つの要素は追わずに切る。
そうする事で、目指すイベントの方向性をより明確に定めるべきではないか?私はそのように感じた次第である。