茨城県の同人誌即売会事情を紐解くと、北部・日立市や南部・土浦市では定期的に同人誌即売会が開催されている。
また、「ガールズ&パンツァー」の舞台という事で、大洗町での聖地開催・ガルパンオンリーも目立つ。

だが、県庁所在地・水戸市に限っては、長らく同人誌即売会が行なわれることはなかった。
2007年までは、スタジオYOUにより「おでかけライブin水戸」が開催されていたものの、「おでかけライブ」撤退後は、2010年の「コみケッとスペシャルin水戸」まで待たねばならなかった。

なお、「おでかけライブ」撤退の理由も、これまで常用してきた会場「サントピア」の2007年閉館が大きかったようだ。
(参考リンク「サントピアを解体、更地へ 水戸の若者文化をリード」

水戸市内は、同人誌即売会に適する公共施設が無く、「おでかけライブ」も商業施設「サントピア」の空きテナントを活用し即売会を開催した。
だが「サントピア」閉館後は代わる会場も見つからず。「おでかけライブ」以降は、他イベンターも含め水戸市内での即売会開催の動きは一切なし。
2010年の「コみケッとスペシャルin水戸」ですらも、廃ビルを活用するという提案の斬新さが評価されて応募した10数地域との競争を勝ち抜いたが、これも実は、同人誌即売会に適する会場がなかったがための「窮余の策」であった。

そして「コみケッとスペシャルin水戸」以後も同人誌即売会は開催されることはなく…
今回開催された「みとコミックフェスティバル」は、「コみケッとスペシャルin水戸」以後、水戸市で初めて開催された同人誌即売会だ。水戸市での開催は、実に6年ぶりとなる。
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今回の「みとコミックフェスティバル」は、「水戸まちなかフェスティバル」に合わせた取組の一環としての位置づけだ。
「水戸まちなかフェスティバル」は、2011年・東日本大震災で市役所が半壊するなど甚大な被害を蒙った水戸市が、水戸の復興ぶりや魅力を発信しつつ、中心市街地の活性化を目指すべく、震災翌年の2012年から開催している祭事だ。
市の中心街・目抜き通り約1kmを車両通行止め・歩行者天国化した上で、そこに屋台・フリーマーケットからポニー乗馬体験・ワークショップ・痛車展示まで、様々な企業・団体が出展。街中での「文化祭」的な要素も持つ、ストリートイベントだ。

実行委員会の事務局は、水戸市産業経済部商工課に設置。
「コみケッとスペシャルin水戸」招致元であった「水戸市政策研究会」観光の同人誌「みとコミ伝」によれば、「コみケッとスペシャルin水戸」における水戸市側のスタッフも、今回の「水戸まちなかフェスティバル」運営に参画しているとのことだ。

「みとコミックフェスティバル」は、専門学校・文化デザイナ―学院での開催。
「まちなかフェスティバル」の会場である目抜き通りに面し、市中心部のランドマーク「京成百貨店」にもほど近い。「コみケッとスペシャルin水戸」の会場となった廃ビル・旧伊勢甚ビルも目と鼻の先だ。
このロケーションなら駅から遠いけど(約1km)、バスも頻発しているから大丈夫か、と思ったが、よくよく考えてみたらバス通り「まちなかフェスティバル」で歩行者天国化しているからバスは走らないw
…私は、水戸駅から1kmひたすら歩いて会場に向かったw

途中、林立する屋台の誘惑に負けて余計な時間を食ったので、30分ぐらいかかったものの、何とか文化デザイナー学院に到着。
1階が「大同窓会」と題した学院OB・OGたちによるフリーマーケット。クラフト・アクセサリー等の出店が目立つ。5階は、コスプレ用の更衣室として供用された。

我々の参加する同人誌即売会「みとコミックフェスティバル」は、2階が会場として供用された。
実はこのイベント、催事の情報公開ならびにサークル参加案内が8月からと極めて遅かった。
9月上旬締切という超短期決戦型告知で、宣伝不足気味。サークルの集まり具合も心配されたが、それでも36サークル・48spが集った。
教室だけではサークルを収容しきれず、生徒たちのロッカールームまでもが、サークルスペースに供用されたぐらいだw
初動の遅さにもかかわらず、まあまあ集まったこの状況を見るに、茨城という地域が、いかに即売会に「飢えているか」を感じ取れた。


この「みとコミックフェスティバル」は、オールジャンルの同人誌即売会。
ジャンル傾向は結構バラけているが、おそ松さん・刀剣乱舞・うたプリあたりが若干目立つ感がある。男性向け系統ジャンル・女性向け系統のジャンル両者の比率は、3:7ぐらいだと思う。
地元の同人者中心ということで、若い世代の女性が多いとは思う。ただ、当サークルが配置された創作系ジャンルにも一定の来訪者が訪れており、年長者や男性もそこそこお見えになったとも感じる。

主催は、「株式会社CRiE」という地元の企業さん。
調べてみると、webデザインやOA機器やネットワークの保守配線等が事業であり、どう考えても即売会やる系統の企業ではない。恐らく、受付業務などを受託しただけで、実質的な主催は別にいるんじゃないかとは思うが、そこまでは調べきれなかった。
但し、即売会運営においては、サークル案内の発送が遅かったことを除けば、瑕疵も無かった。無難な運営だったことは付け加えておきたい。

ただ、即売会10時スタート・16時終了はちょっと長すぎたような気がする。
この時間設定は、親イベントに相当する「水戸まちなかフェスティバル」に合わせてのスケジューリングなのだろうが、サークルにしてみれば、6時間もの頒布時間、集中力が持たないw
規模が大きくこの時間割にしないと買い手が回りきれないコミケならいざ知らず、普通の小規模即売会ならちょっと長すぎだと思う。
実際、15時過ぎには、 女性のサークルさんは大半が撤収。場の雰囲気も少し寂しかった。
ここはサークルの実情に合わせ、15時終了にしても良いと思う。


とりあえず「みとコミックフェスティバル」は無難に終えたと思うが、最後に二点ほど申し上げたい。

一つは、変わらず厳しい水戸の会場事情についてだ。

今回、水戸で何故即売会が実現できたか。これは、文化デザイナー学院が自分の校舎を提供してくれたことが全てであり、我々は深く感謝せねばならない。
同学院の生徒さんたちは、「まちなかフェスティバル」会場の路上にテントを設け、ファッションショーやワークショップなど独自の企画で出店。校舎を留守にしてくれた。
だからこそ我々も、そのお留守になった校舎を活かして即売会を楽しめた。

つまり、普段の休日だと、これは出来ない話。
「まちなかフェスティバル」があるからこそ、学院を即売会に使える、ということでもある。

逆に言えば「まちなかフェスティバル」に合わせる形「以外」で、水戸市内においては、同人誌即売会の会場確保に目途が付いていない、ということにもなる。

相変わらず厳しい会場事情だが、市民会館が新築される予定なので(場所は「コみケッとスペシャルin水戸」会場だった旧伊勢甚ビル)、これが厳しい会場事情に対する「希望の光」となることを期待したい。


もう一つは、これは即売会の問題というより「まちなかフェスティバル」の問題だが…
せっかく「コスプレ」「痛車」「同人誌即売会」といったオタク向けコンテンツを催事内に盛り込めたのだから、これをもっと広げて、より多くのオタク連中に来てもらえるように努力できるんじゃないだろうか?と感じた。

元々、この「まちなかフェスティバル」は、老若男女皆が集うと言えば聞こえは良いが、実態は多様なクラスタが多様に出店するため、統一性の無い「ごった煮」「何でもあり」な状況で、けっこうカオスだw
いや、別にカオスなのは否定するつもりはない。というか、だからこそ面白いと思うw

ならばそこに、オタク連中を集めてさらに訳わかんないカオス状態を加速させるのも一興かもしれないw
ぶっちゃけ「みとコミックフェスティバル」の管掌だった痛車展示やコスプレを独立させ、別団体別イベントとして、規模も大きくして運営するのだ。

痛車展示にしても、今回デザイナー学院前に3台程度申し訳なさそうに鎮座している程度だったが、いっそのこと場所を仙波湖あたり移して、数十台単位集められないか。
コスプレにしても、「まちなかフェスティバル」内・野外コスプレイベントとしての位置づけで、まちなかフェスティバル会場の目抜き通りは勿論、仙波湖・弘道館公園・水戸芸術館あたりもコスプレフリーとすれば、ロケーションも悪くないので結構大勢参加してくれそうな気もする。
コスプレ・痛車と同人誌即売会との相乗効果で、オタク連中が今まで以上に多く来てくれるだろうから、その分より楽しくなるだろうw

もちろん、その場合更衣室はデザイナー学院じゃ狭すぎるのでもっと広めのところを考えないといけないし、規模を大きくする分、運営を委託できそうなイベンターも探さないといけないだろうが…
規模を大きくするにも面倒な課題は諸々あるだろうが、そこをクリアできそうならば、一考の余地はあると思う。