「ラブライブ!サンシャイン!!」の舞台・聖地となった静岡県沼津市
沼津・内浦地区をはじめ、沼津駅周辺・沼津港など沼津市内の広範な地域が、作品の舞台となっている。
昨年流行語大賞候補に「聖地巡礼」の語がノミネートされたように、作品舞台を訪れる旅行も決して珍しくはない。沼津にも、大勢の「ラブライバー」が足を運んでいる。

(なお、当サークルも、昨年末・冬コミにて「コンテンツツーリズム取組事例集3」を刊行したが、その中で「ラブライブ!サンシャイン!!」にまつわる沼津の動きについても論じている)

ファンが町に足を運んでくれる好機を、町の盛り上がりに繋げようと、地域民やファンにより様々な取組が実践されている。
制作側・権利元と組んでオフィシャルにコラボを進める大々的なものもあれば、ファンや地域の小規模商店が主体となってミニイベント・ミニフェアを開くささやかなものまで、規模の大小問わず多様な取組が進められている。

前者の例としては、パン会社が展開している公式コラボの「のっぽパン」や、伊豆箱根鉄道・東海バスによるラッピングバス・記念乗車券等の展開が挙げられるだろう。
当サークルは、寧ろ後者−ファンや地域商店主体の取組に注目している。地域商店に関しても、沼津内浦地区・沼津駅近辺(沼津港や上土商店街など)で顕著な取組が散見し始めているが、ファン自らが率先しての取組は、余りお目にかかることはない。
当サークルは、著書「コンテンツーリズム取組事例集」の中で、【ファンのつくるコンテンツが楽しみを増やす】と一貫し主張している。
これは、ファン自らの自発的取組が、他のファンを楽しませるという考え方。観光学者・岡本健准教授の著書「n次創作観光」に記された概念を、自分なりに齟齬した主張だ。
例えば、沼津でのラブライブオンリー同人誌即売会(4月16日開催)もそうだが、ファンが自らイベントを興すことで、そのイベントの存在をきっかけにファンが町を訪れる。ファンを訪問させる動機付けにもなる。訪れるファンにとっては、聖地巡礼「以外」にも楽しみが増える。
他にも色々な例があるが、ファンが絵を描き遺し、神社やらお店やらに飾られたりすれば、それを他のファンが眺めて楽しめるという構図もある。

そういう訳で、沼津でも、ファン自らによる主体的取組がもう少し増えても良いのでは?とは感じていたが、今回は、作品舞台にて痛車ミーティング&コスプレイベントの開催、という取組。
時間が空いたので、舞台探訪・聖地巡礼も兼ねて沼津に足を運んだ。

会場は、沼津市内の志下地区・志下海岸
沼津駅から、沼津南部の聖地・内浦地区に向かうバスに乗り、約20分。沼津から見て、内浦の相当手前に当たるロケーションだ。沼津御用邸記念公園を過ぎ、少しだけ南にいったところが、志下地区と考えれば良いだろうか。
この志下地区・志下海岸付近も、若干だが「ラブライブ!サンシャイン!!」の舞台として起用されている。内浦ほどではないにせよ、ここも「聖地」と言えるだろう。
野外イベントだけに、小雨ちらつく天候だったのが、やや残念なところ。何とかギリギリ決行できただけ良かった、とも言えるかもしれないが…

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今回の「志下海岸 勇み踊り祭り」では、志下自治会の協力を得て、志下海岸の駐車場を無料開放。ここに痛車を数多く並べ、コスプレもOKとした。

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コスプレ更衣室は、近隣の志下公会堂を借りて対応。公会堂を借りられたことも含め、地域自治会との連携を密に取ることで、イベント開催が実現できたと言えるだろう。
会場内には、焼きそばの調理業者と、沼津駅仲見世に店舗を構えるいちごジュースのお店「アベリー」も出店。

焼きそばは、卵の生地を乗せ、そこにケチャップをかける「ヨキソバ」風の趣向。場を盛り上げると共に、会場における参加者への供食体制も整備した。
麺も、みかんや抹茶・イカスミなどを練り込むことで、色付きの麺に仕立てた趣向(味はどの色でも変わらず普通の焼きそばの味)。登場キャラのイメージカラーに沿ったものを用意したとのこと。


伊豆の情報サイト「ゆうゆうネット伊豆」によると、「勇み踊り祭り」について以下のようにアピールが為されている。

「毎年4月4日に行われる大瀬祭りを参加しやすいように日曜日にずらしアニメ要素を追加しました。」

大瀬祭りは、毎年4月4日に内浦地区で開催。
大漁と航海安全を祈願しつつ、華やかに装飾された漁船が大瀬神社に向け出航。女装した男たちが船上で「勇み踊り」を繰り広げるという、知る人ぞ知る奇祭。
とは言え、4月4日は平日なので、聖地巡礼者もなかなか足を運べない(というか存在を知らぬ方も多いだろう)。そこで今回、志下から「大瀬祭り」に出航したチームの皆さんがこのイベントに出張。勇み踊りを披露し祭りをアピールする、という構図だ。
11時30分、13時30分の2階、踊りが披露された。
勇み踊り祭りの披露は、多くの参加者の注目を集めていた。

なお、今回の「志下海岸 勇み踊り祭り」においては、コスプレは女装のみ可能としている。
これは、大瀬祭りでの「勇み踊り」が、女装した男たちによる踊りであることに由来しているようだ。
大瀬祭り・勇み踊りの要素を絡める事で、コスプレイベントでは珍しい「女装オンリー」というコンセプトに仕上がってしまったようだw

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総じて見て、痛車ミーティングは数多くの台数を集め、成功裡に終えたと言えるだろう。
その一方、コスプレイヤーの参加が伸びず、コスプレイベントとしてはやや物足りない成果に終わったような気がする。

では、コスプレイベントに、いかにコスプレイヤーを呼び込むか?
私も同人誌即売会に比べコスプレイベントの集客については知見が足りない。今後も勉強していきたいところではあるが、ヒントは痛車の集客力にもあると思う。

痛車側は多数集ったが、これはお招きした協力者の方の力を上手くお借りできたことが大きいだろう。
その協力者の方は、過去沼津市内(内浦地区)で痛車ミーティングを開催した実績を持つ。その中で、他の痛車使いともコネクションを培っているようだ。そういう方が募集を掛けたということで、短い準備期間の中ながらも20台以上の痛車を招聘できたと思う。
コスプレイベントも同様で、他のコスプレイヤーの皆さんとのコネクションを豊富にお持ちの有力コスプレイヤーさんから理解・協力を得られれば、その人経由で、芋づる式でコスプレイヤーも集いそうな気がする。

私も、コスプレイベントでいかにコスプレイヤーを集めるかの方法論については、まだ充分な知見を有しているとは言えない。色々突っ込み・ご意見等いただければ幸いではあるが、有力者を協力者としてお招きすることも一つの方法論なのかも?とは考えている。