「おたコス」は、人口1万ちょいの小さな町・三重県多気町が舞台。
「聖地創造」をスローガンに、サブカルチャーを通じての「町おこし」を志向しているコスプレイベントだ。
コスプレイベントは、同人誌即売会に比べ当方も理解に弱い部分が多い。参加することも、レポートすることも余り少ない。
ただ、当サークルも「コンテンツツーリズム取組事例集」を刊行しており、アニメ・マンガ等を通じての「町おこし」に興味・関心が高い。
その立場を取る当サークルとしては、このイベントは一度この目で見てみたい、との思いも強かった。
そして、「おたコス」はコスプレイベントながらも、同人サークル等クリエイターの出店も受け付けている…ということで自分も「同人サークル」として「出店」させていただくことにした。
「聖地創造」をスローガンに、サブカルチャーを通じての「町おこし」を志向しているコスプレイベントだ。
コスプレイベントは、同人誌即売会に比べ当方も理解に弱い部分が多い。参加することも、レポートすることも余り少ない。
ただ、当サークルも「コンテンツツーリズム取組事例集」を刊行しており、アニメ・マンガ等を通じての「町おこし」に興味・関心が高い。
その立場を取る当サークルとしては、このイベントは一度この目で見てみたい、との思いも強かった。
そして、「おたコス」はコスプレイベントながらも、同人サークル等クリエイターの出店も受け付けている…ということで自分も「同人サークル」として「出店」させていただくことにした。
【万協フィギュア博物館の開設】
1995年の阪神・淡路大震災で自社工場が全壊。従業員を全員解雇し当地での自主再建を断念した製薬会社「万協製薬」は、三重県多気町に本社工場を新たに構え、再起を期した。
その後の経緯は割愛するが、「万協製薬」はこの苦難をバネに急成長を遂げ、現在は多気町内に工場を3つ構えるほどに、商いを広げていった。
その内の一つの工場−万協製薬第3工場が2014年3月に竣工。
この工場敷地の一角に開設されたものが、同社社長・松浦信男氏私有のフィギュアコレクションを展示した「万協フィギュア博物館」である。
フィギュア博物館の子細については、本年2017年4月に、当方も視察を兼ねて訪問。記事も挙げているので、ここでは割愛したい。ただ、その数が2〜3万体とも言われるあたりで、圧巻の物量をご理解いただきたいところである。(参照:2017年04月18日付『4/1 三重県多気町「フィギュア博物館」訪問!』)
日経トレンディネット(2015年11月06日/『おたコス4開催の多気町は「町おこしの百貨店や」』)に松浦氏の談が掲載されているので抜粋したい。
>「1年間で5000人ほどの若者が来場した。館内で地元の産品も売って、これぞ、ミュージアムショップと、真面目に取り組んでいたが、そこでかれらにロケーションコスプレをやってほしいと嘆願されたのが、おたコスのきっかけだった」と松浦さん。
こうして2014年秋、「おたコス」はスタートした。
【「おたコス」の登場と定着】
フィギュア博物館開設の頃より、松浦氏は多気町の「町おこし」に本腰を入れ始めた。
先述日経トレンディネットによると、行政への提言を目的に多気町工業会を立ち上げ、多気町商工会会長にも就任。2015年7月には、観光協会会長にも就任しているようだ。
また、ご夫人も、町議に就任し町づくりに協力されている様子が窺える。
その「町おこし」の一環として始まったのが、コスプレイベント「おたコス」だ。
自社所有のフィギュア博物館をメイン会場としつつも、町内全域をコスプレフリーに設定。町内の体育館やグラウンド・寺社仏閣等を開放し、コスプレイヤー向けに「背景」を提供している。
特に白眉と言えるのは、町内の河原をコスプレ撮影に開放したこと。水辺でのコスプレ撮影というものは他のコスプレイベントでもなかなかお見掛けしない。「おたコス」ならではの独自の背景を提供できた点が、コスプレイヤーに好評のようだ。
(非常に上手い対応だが、どうやら、コスプレイベントに詳しいブレーンがいるらしいという話も聞いている)
また、コスプレイヤー(及びカメラマン)は、SNS等で自分の画像を掲載する習性があるが、これも町にとってもプラスになると捉えているようだ。
先述日経トレンディネットでは「町に来てもらい、写真を撮ってもらって、SNSで発信してもらう。一人一人が無償の観光大使になってくれる」と語っている。
この視点は、日経トレンディネットは「ビジネスマン、経営者の視点」と評しているが、実はコンテンツツーリズム研究の第一人者・岡本健准教授(奈良県立大学)も、青森県佐井村の町おこしコスプレイベントについて、風景を背景にした写真が発信されることで、背景に移る地域の魅力を発信してくれる、とその効果を肯定的に捉えている。(参照:「コスプレイベントを田舎で開催 地域おこし隊のアイデア生かす」)
経営者たる松浦氏と、研究者たる岡本氏が、それぞれ別の地域のイベントを指して語っているにもかかわらず、両者とも同じような結論に帰結している点が興味深いが、それだけお二人の指摘は、的を得ているということだろう。
もちろん、その過程では、これまで多気町で見られなかった異形の者に対する反発もあったようだ。
ただ、年2回ペースで安定しての開催。開催する度に数百人〜1000人以上の集客を果たしている。その実績は、決して馬鹿には出来ないだろう。(日経トレンディネットでは1万の見込とか書いてあるが、それは流石に盛り過ぎ…汗)
これまでは、シャープの工場以外に、町に若者を呼び込む術は見当たらなかったのだから…
協力者も少しずつ増えているようで、2015年には地元の酒造と提携して「萌杉(もえすぎ)」と称する地酒を「おたコス」とのコラボ商品として開発した。(参照:伊勢志摩経済新聞・2015年07月20日付『創業158年の三重の地酒「鉾杉」が「おたコス」とコラボで「萌杉」を新発売』)
多気町長も、2015年1月開催時には、ゲゲゲの鬼太郎に扮してコスプレに挑戦していたようだw(参照:伊勢志摩経済新聞・2015年01月19日付『多気町がサブカルチャーの聖地に−コスプレーヤーや痛車など集う「おたコス」』)
こんな具合に、賛同者も増え、取組の輪も広がりを見せていることは間違いないだろう。
【当日参加してみての雑感】
メイン会場となる「フィギュア博物館」は、多気町の中心・相可(おうか)地区も所在。
最寄りは紀勢本線の相可駅。そこから歩いて10〜15分程度の距離だが、問題は相可駅に止まる列車の本数の少なさだ。1日10本、しかも昼間は4時間間隔が空くこともあり、相可へのアクセスは極めて厳しい。
多気駅は「快速いせ」も停車するなど頻繁に列車が止まるのに、一駅隣になるだけでこの有様だ。…大きな格差を感じる(汗)
このアクセスの不便さに対応すべく、「おたコス」ではバスをチャーター。多気駅と相可のメイン会場とを繋ぐ、無料送迎を随時運行している。
また、多気町内全域コスプレフリーとしてはいるものの、町内を巡る公共交通機関は土日運休。このままでは、車組以外は町中を回遊することもできない。
そこで、「おたコス」開催期間に限り、人気撮影スポットでもある天啓・丹生・河原のロケ会場3ケ所と、メイン会場・フィギュア博物館を結ぶ巡回無料バスを運行している。
これ以外にも、本部での相談が必要なようだが、スタッフがミニバンで送迎して下さるケースもあるようだ。
車組以外でも参加しやすいよう、二次交通を充実させている点が、「おたコス」の長所と言えるだろう。

会場到着後、受付でチケットを購入。
参加チケットは1500円だが、この中には会場内で使える500円の金券、そして万協製薬製造の日焼け止めクリーム(600円相当)も含まれている。サークル出店の費用が別途発生することもないし、フィギュア博物館(入場料800円相当)にも入場できるので、サークル出店は相当お得感がある…というか実質負担ゼロ同然じゃないだろうか(汗)
ただ野外配置なので、万一の雨天が怖い。一応念のためにテントを注文したが、これは別途1000円費用がかかる。まあ、このぐらいの負担で済むなら、非常にありがたい。
とは言えあくまでコスプレがメイン。サークル参加も6サークルに過ぎない。
まあ、どうせサークルに立ち寄る人も少ないだろうとタカを括り、午前中、無人店舗にして町内巡回バスで町中を視察していたら、戻った時には数冊売れていたので油断ができないw
ステージイベントの司会が、サークルを巡回して1サークル1サークル紹介してくれるという試みもあったので、そこでアピールできた点が利いたのだろうか。
会場は、フィギュア博物館も併設されている万協製薬第三工場を目いっぱい利用していた。
土地も広く、駐車場の面積も広大だ。この駐車場を活用し、痛車展示場として提供した他、サークルやケータリング業者・ステージ等も配置。それでもまだ充分余るスペースは、一般来場者用の駐車場としても提供している。
ただ、更衣室だけは屋外配置が難しいため、「フィギュア博物館」も併設されている万協製薬社屋内に用意していた。

ステージでは、時間を区切って有志によるステージパフォーマンスが、随時行われる。
12時からは地元プロアニメーターを招いてのトークショーも開かれるなど、色々趣向が凝らされていた。「おたコス」実行委員長でもある松浦社長が、スーパーサイヤ人孫悟空のコスに扮しながらステージで熱唱する一幕も…
サークルとしても思った以上に売れたし、色々な趣向を楽しめたので、足を運んで良かったとは思うが、唯一の難点は「猛暑」だろう。
この日は最高気温も30度を超えており、屋外サークルスペースで陣取ってるだけでも汗だくだく…我慢できずサークルスペースを空けることもしばしば。
んで、当方はフィギュア博物館にGO!いやー屋内は冷房効いて涼しいね!
というわけで、4月訪問時に殆ど見られなかった「フィギュア博物館」を、涼を取りながら存分に眺め、ある程度涼しくなったらサークルスペースに戻り、暑くなったらフィギュア博物館に直行…イベント後半は、サークルスペースとフィギュア博物館を往復するだけの展開にw
【今後の課題】
今回も「おたコス」は相応の盛り上がりを見せ、無事に終わったが、気になるのは参加者の動員である。
メインとなるコスプレイヤーの参加数について、私はコスプレイヤーアーカイブスにおける「pt数」を目安にしている。pt数は、コスプレイヤーの参加表明等そのイベントに対する動きに応じポイントが加算される仕組み。過信は禁物だが、pt数が多いほどコスプレ参加者が多いイベントになる可能性が高い」 と考えて良いだろう。
「おたコス」のpt数は以下の通りである。
第1回(2014年11月):109pt
第2回(2015年1月):310pt
第3回(2015年7月):637pt
第4回(2015年11月):639pt
第5回(2016年7月):791pt
第6回(2016年11月):597pt
第7回(2017年7月):507pt
初回pt数は少なかったものの、イベントの存在が周知されると共にpt数が上昇。参加者数も、増加と見て良いだろう。
しばらく右肩上がりで続くも、2016年秋から少し落ち気味ではある。すなわち、動員数が減っている可能性が高いため、これを何とかテコ入れする必要に迫られている。
【9/4追記】コスプレイヤーズアーカイブの利用率減少によるpt数減少の可能性も指摘されている。あくまで動員数が減っている可能性がある、ということでご了解いただきたい。
この手の現象は、実はどこのイベントでも見られる「成長曲線」だ。
最初は知名度の増加ともあって順調に成長するも、ピークを境に下降線…良くある話である。このままズルズル落ちる可能性もあれば、テコ入れが成功して再び右肩上がりに戻る可能性もある。「おたコス」も、今が正念場と言えるだろう。
一般論として言えるのは、シチュエーションが「飽きられた」というパターンだろう。これはどの同人誌即売会でもコスプレイベントでも、回を重ねた催事が必ず直面する壁だ。
「おたコス」は、学校や河原など、特異な背景を提供することで他のコスプレイベントとの差別化を図ってきた。それが奏功し、成長を遂げたイベントだ。
だが、回を重ねるごとにコスプレイヤーに飽きられる…となればその分pt数が減るのも道理だろう。
これを解決する方法としては、2019年11月オープン予定のリゾート施設「アクアイグニス」もコスプレ会場に組み込む、という方法が考えられる。テーマパーク等での野外コスプレイベントは一般化しており、この方策は充分「あり」だと思うが、今から2年辛抱し待たねばならない。
それまでの2年間に、何ができるかを考える必要がある。
一つは、「目新しさの提供」という方向性であろう。
自分の思い付きも入っており恐縮だが、例えば、世界コスプレサミットの予選大会を「おたコス」の誘致する。「高校生レストラン」でも有名な五桂ふるさと村を新しく「背景」として売り出す。酒造会社の醸造工場(工場での撮影は珍しいと思う)を「背景」として売り出す。
色々と方法は考えられるが、今までにない「新しいもの」を、ワークショップやアイディアソン等を通じ皆で考え、アイディアを出し合う。そしてそれを「おたコス」での新しいセールスポイントとして売り出す、という考え方だ。
もう一つは、「食」を売り出すという方向性だ。
先に、コスプレイヤー(及びカメラマン)がSNS等で自分の画像を掲載する習慣は、町やの風景や魅力を発信することに繋がる旨を論じさせていただいた。実は「食」も、これと同じ論理が通用する。
「飯テロ」という言葉もあるぐらいだが、特にTwitterでは、自分の食べようとしている食事(特に名物料理など)を写真に収め発信する習性が存在する。
多気町については、先述・五桂ふるさと村の「高校生レストラン」もある。
秋になれば、カキやミカンが大量に収穫される。伊勢イモも名物だ。
掘り込めば、売り出せる「食」は色々ある。
高校生レストランへの送迎バスを出す、屋台にカキ・ミカンの農家を招聘する、等の方法も考えられる。「おたコスで食べたものの写真コンテスト」なんて開いて、Twitterで食画像の投稿を促し、優勝者には何らかの賞品を贈呈する、なんて企画もアリだと思う。
ここも、ワークショップ・アイディアソン等を通じ皆で考え、アイディアを出し合いたい。
多気ならではの味覚を、多気「おたコス」に足を向ける動機付けにできないものか、検討しても良いと思う。
「おたコス」は賑わいのある素晴らしいイベントだが、「聖地創造」を目指すに当たり「壁」というか課題が見え始めているようにも思える。これを乗り越え、「聖地創造」が実現に至ることを心より願っている。
1995年の阪神・淡路大震災で自社工場が全壊。従業員を全員解雇し当地での自主再建を断念した製薬会社「万協製薬」は、三重県多気町に本社工場を新たに構え、再起を期した。
その後の経緯は割愛するが、「万協製薬」はこの苦難をバネに急成長を遂げ、現在は多気町内に工場を3つ構えるほどに、商いを広げていった。
その内の一つの工場−万協製薬第3工場が2014年3月に竣工。
この工場敷地の一角に開設されたものが、同社社長・松浦信男氏私有のフィギュアコレクションを展示した「万協フィギュア博物館」である。
フィギュア博物館の子細については、本年2017年4月に、当方も視察を兼ねて訪問。記事も挙げているので、ここでは割愛したい。ただ、その数が2〜3万体とも言われるあたりで、圧巻の物量をご理解いただきたいところである。(参照:2017年04月18日付『4/1 三重県多気町「フィギュア博物館」訪問!』)
日経トレンディネット(2015年11月06日/『おたコス4開催の多気町は「町おこしの百貨店や」』)に松浦氏の談が掲載されているので抜粋したい。
>「1年間で5000人ほどの若者が来場した。館内で地元の産品も売って、これぞ、ミュージアムショップと、真面目に取り組んでいたが、そこでかれらにロケーションコスプレをやってほしいと嘆願されたのが、おたコスのきっかけだった」と松浦さん。
こうして2014年秋、「おたコス」はスタートした。
【「おたコス」の登場と定着】
フィギュア博物館開設の頃より、松浦氏は多気町の「町おこし」に本腰を入れ始めた。
先述日経トレンディネットによると、行政への提言を目的に多気町工業会を立ち上げ、多気町商工会会長にも就任。2015年7月には、観光協会会長にも就任しているようだ。
また、ご夫人も、町議に就任し町づくりに協力されている様子が窺える。
その「町おこし」の一環として始まったのが、コスプレイベント「おたコス」だ。
自社所有のフィギュア博物館をメイン会場としつつも、町内全域をコスプレフリーに設定。町内の体育館やグラウンド・寺社仏閣等を開放し、コスプレイヤー向けに「背景」を提供している。
特に白眉と言えるのは、町内の河原をコスプレ撮影に開放したこと。水辺でのコスプレ撮影というものは他のコスプレイベントでもなかなかお見掛けしない。「おたコス」ならではの独自の背景を提供できた点が、コスプレイヤーに好評のようだ。
(非常に上手い対応だが、どうやら、コスプレイベントに詳しいブレーンがいるらしいという話も聞いている)
また、コスプレイヤー(及びカメラマン)は、SNS等で自分の画像を掲載する習性があるが、これも町にとってもプラスになると捉えているようだ。
先述日経トレンディネットでは「町に来てもらい、写真を撮ってもらって、SNSで発信してもらう。一人一人が無償の観光大使になってくれる」と語っている。
この視点は、日経トレンディネットは「ビジネスマン、経営者の視点」と評しているが、実はコンテンツツーリズム研究の第一人者・岡本健准教授(奈良県立大学)も、青森県佐井村の町おこしコスプレイベントについて、風景を背景にした写真が発信されることで、背景に移る地域の魅力を発信してくれる、とその効果を肯定的に捉えている。(参照:「コスプレイベントを田舎で開催 地域おこし隊のアイデア生かす」)
経営者たる松浦氏と、研究者たる岡本氏が、それぞれ別の地域のイベントを指して語っているにもかかわらず、両者とも同じような結論に帰結している点が興味深いが、それだけお二人の指摘は、的を得ているということだろう。
もちろん、その過程では、これまで多気町で見られなかった異形の者に対する反発もあったようだ。
ただ、年2回ペースで安定しての開催。開催する度に数百人〜1000人以上の集客を果たしている。その実績は、決して馬鹿には出来ないだろう。(日経トレンディネットでは1万の見込とか書いてあるが、それは流石に盛り過ぎ…汗)
これまでは、シャープの工場以外に、町に若者を呼び込む術は見当たらなかったのだから…
協力者も少しずつ増えているようで、2015年には地元の酒造と提携して「萌杉(もえすぎ)」と称する地酒を「おたコス」とのコラボ商品として開発した。(参照:伊勢志摩経済新聞・2015年07月20日付『創業158年の三重の地酒「鉾杉」が「おたコス」とコラボで「萌杉」を新発売』)
多気町長も、2015年1月開催時には、ゲゲゲの鬼太郎に扮してコスプレに挑戦していたようだw(参照:伊勢志摩経済新聞・2015年01月19日付『多気町がサブカルチャーの聖地に−コスプレーヤーや痛車など集う「おたコス」』)
こんな具合に、賛同者も増え、取組の輪も広がりを見せていることは間違いないだろう。
【当日参加してみての雑感】
メイン会場となる「フィギュア博物館」は、多気町の中心・相可(おうか)地区も所在。
最寄りは紀勢本線の相可駅。そこから歩いて10〜15分程度の距離だが、問題は相可駅に止まる列車の本数の少なさだ。1日10本、しかも昼間は4時間間隔が空くこともあり、相可へのアクセスは極めて厳しい。
多気駅は「快速いせ」も停車するなど頻繁に列車が止まるのに、一駅隣になるだけでこの有様だ。…大きな格差を感じる(汗)
このアクセスの不便さに対応すべく、「おたコス」ではバスをチャーター。多気駅と相可のメイン会場とを繋ぐ、無料送迎を随時運行している。
また、多気町内全域コスプレフリーとしてはいるものの、町内を巡る公共交通機関は土日運休。このままでは、車組以外は町中を回遊することもできない。
そこで、「おたコス」開催期間に限り、人気撮影スポットでもある天啓・丹生・河原のロケ会場3ケ所と、メイン会場・フィギュア博物館を結ぶ巡回無料バスを運行している。
これ以外にも、本部での相談が必要なようだが、スタッフがミニバンで送迎して下さるケースもあるようだ。
車組以外でも参加しやすいよう、二次交通を充実させている点が、「おたコス」の長所と言えるだろう。

会場到着後、受付でチケットを購入。
参加チケットは1500円だが、この中には会場内で使える500円の金券、そして万協製薬製造の日焼け止めクリーム(600円相当)も含まれている。サークル出店の費用が別途発生することもないし、フィギュア博物館(入場料800円相当)にも入場できるので、サークル出店は相当お得感がある…というか実質負担ゼロ同然じゃないだろうか(汗)
ただ野外配置なので、万一の雨天が怖い。一応念のためにテントを注文したが、これは別途1000円費用がかかる。まあ、このぐらいの負担で済むなら、非常にありがたい。
とは言えあくまでコスプレがメイン。サークル参加も6サークルに過ぎない。
まあ、どうせサークルに立ち寄る人も少ないだろうとタカを括り、午前中、無人店舗にして町内巡回バスで町中を視察していたら、戻った時には数冊売れていたので油断ができないw
ステージイベントの司会が、サークルを巡回して1サークル1サークル紹介してくれるという試みもあったので、そこでアピールできた点が利いたのだろうか。
会場は、フィギュア博物館も併設されている万協製薬第三工場を目いっぱい利用していた。
土地も広く、駐車場の面積も広大だ。この駐車場を活用し、痛車展示場として提供した他、サークルやケータリング業者・ステージ等も配置。それでもまだ充分余るスペースは、一般来場者用の駐車場としても提供している。
ただ、更衣室だけは屋外配置が難しいため、「フィギュア博物館」も併設されている万協製薬社屋内に用意していた。

ステージでは、時間を区切って有志によるステージパフォーマンスが、随時行われる。
12時からは地元プロアニメーターを招いてのトークショーも開かれるなど、色々趣向が凝らされていた。「おたコス」実行委員長でもある松浦社長が、スーパーサイヤ人孫悟空のコスに扮しながらステージで熱唱する一幕も…
サークルとしても思った以上に売れたし、色々な趣向を楽しめたので、足を運んで良かったとは思うが、唯一の難点は「猛暑」だろう。
この日は最高気温も30度を超えており、屋外サークルスペースで陣取ってるだけでも汗だくだく…我慢できずサークルスペースを空けることもしばしば。
んで、当方はフィギュア博物館にGO!いやー屋内は冷房効いて涼しいね!
というわけで、4月訪問時に殆ど見られなかった「フィギュア博物館」を、涼を取りながら存分に眺め、ある程度涼しくなったらサークルスペースに戻り、暑くなったらフィギュア博物館に直行…イベント後半は、サークルスペースとフィギュア博物館を往復するだけの展開にw
【今後の課題】
今回も「おたコス」は相応の盛り上がりを見せ、無事に終わったが、気になるのは参加者の動員である。
メインとなるコスプレイヤーの参加数について、私はコスプレイヤーアーカイブスにおける「pt数」を目安にしている。pt数は、コスプレイヤーの参加表明等そのイベントに対する動きに応じポイントが加算される仕組み。過信は禁物だが、pt数が多いほどコスプレ参加者が多いイベントになる可能性が高い」 と考えて良いだろう。
「おたコス」のpt数は以下の通りである。
第1回(2014年11月):109pt
第2回(2015年1月):310pt
第3回(2015年7月):637pt
第4回(2015年11月):639pt
第5回(2016年7月):791pt
第6回(2016年11月):597pt
第7回(2017年7月):507pt
初回pt数は少なかったものの、イベントの存在が周知されると共にpt数が上昇。参加者数も、増加と見て良いだろう。
しばらく右肩上がりで続くも、2016年秋から少し落ち気味ではある。すなわち、動員数が減っている可能性が高いため、これを何とかテコ入れする必要に迫られている。
【9/4追記】コスプレイヤーズアーカイブの利用率減少によるpt数減少の可能性も指摘されている。あくまで動員数が減っている可能性がある、ということでご了解いただきたい。
この手の現象は、実はどこのイベントでも見られる「成長曲線」だ。
最初は知名度の増加ともあって順調に成長するも、ピークを境に下降線…良くある話である。このままズルズル落ちる可能性もあれば、テコ入れが成功して再び右肩上がりに戻る可能性もある。「おたコス」も、今が正念場と言えるだろう。
一般論として言えるのは、シチュエーションが「飽きられた」というパターンだろう。これはどの同人誌即売会でもコスプレイベントでも、回を重ねた催事が必ず直面する壁だ。
「おたコス」は、学校や河原など、特異な背景を提供することで他のコスプレイベントとの差別化を図ってきた。それが奏功し、成長を遂げたイベントだ。
だが、回を重ねるごとにコスプレイヤーに飽きられる…となればその分pt数が減るのも道理だろう。
これを解決する方法としては、2019年11月オープン予定のリゾート施設「アクアイグニス」もコスプレ会場に組み込む、という方法が考えられる。テーマパーク等での野外コスプレイベントは一般化しており、この方策は充分「あり」だと思うが、今から2年辛抱し待たねばならない。
それまでの2年間に、何ができるかを考える必要がある。
一つは、「目新しさの提供」という方向性であろう。
自分の思い付きも入っており恐縮だが、例えば、世界コスプレサミットの予選大会を「おたコス」の誘致する。「高校生レストラン」でも有名な五桂ふるさと村を新しく「背景」として売り出す。酒造会社の醸造工場(工場での撮影は珍しいと思う)を「背景」として売り出す。
色々と方法は考えられるが、今までにない「新しいもの」を、ワークショップやアイディアソン等を通じ皆で考え、アイディアを出し合う。そしてそれを「おたコス」での新しいセールスポイントとして売り出す、という考え方だ。
もう一つは、「食」を売り出すという方向性だ。
先に、コスプレイヤー(及びカメラマン)がSNS等で自分の画像を掲載する習慣は、町やの風景や魅力を発信することに繋がる旨を論じさせていただいた。実は「食」も、これと同じ論理が通用する。
「飯テロ」という言葉もあるぐらいだが、特にTwitterでは、自分の食べようとしている食事(特に名物料理など)を写真に収め発信する習性が存在する。
多気町については、先述・五桂ふるさと村の「高校生レストラン」もある。
秋になれば、カキやミカンが大量に収穫される。伊勢イモも名物だ。
掘り込めば、売り出せる「食」は色々ある。
高校生レストランへの送迎バスを出す、屋台にカキ・ミカンの農家を招聘する、等の方法も考えられる。「おたコスで食べたものの写真コンテスト」なんて開いて、Twitterで食画像の投稿を促し、優勝者には何らかの賞品を贈呈する、なんて企画もアリだと思う。
ここも、ワークショップ・アイディアソン等を通じ皆で考え、アイディアを出し合いたい。
多気ならではの味覚を、多気「おたコス」に足を向ける動機付けにできないものか、検討しても良いと思う。
「おたコス」は賑わいのある素晴らしいイベントだが、「聖地創造」を目指すに当たり「壁」というか課題が見え始めているようにも思える。これを乗り越え、「聖地創造」が実現に至ることを心より願っている。