筆者は、これまでの長き同人生活の中で、数多くの「クソ即売会」…別の言い方をすれば「変態即売会」とも「限界即売会」とも言えるが、そういうアレな即売会を、数多く目の当たりにしてきた。
そしてこの2023年。「限界即売会」の「新星」が颯爽と世に現れたw

その催事名『山奥で同人誌即売会』で、だいたいお察しいただけるだろうが、その開催場所が既に「限界即売会」としての風格を醸し出している。

場所は、和歌山県の田辺市。
確かに過去にも、田辺市での即売会は存在した。
だが、田辺市の市街地。市役所そばの「紀南文化会館」での開催が多かった。

しかし、田辺市は「平成の大合併」により、その市域を大きく広げた。
現在では、熊野大社本宮や川湯温泉等のある「本宮町」や、龍神温泉を要する「龍神村」も、田辺市の市域に組み込まれた。
ちなみに、熊野本宮は、田辺市中心部・紀伊田辺駅からバスで【2時間】を要する。その間の道のりも、終点も、全て「田辺市」であるw

今回の即売会会場でもある、「田辺市中辺路」は、紀伊田辺駅からバスで1時間。
そこから徒歩で約15分。
なお、紀伊田辺駅へは、新大阪駅から特急で約2時間20分かかる。

…どんだけ時間かかるんだよ
この即売会、そのアクセスの狂おしいまでの不便さゆえ、参加者が試されている「限界即売会」と言えるだろうw

【目次】
1.田辺市熊野古道「山奥」への道
2.世界遺産!熊野古道レストハウス開催の限界即売会
3.特殊な参加形態の数々
4.今後に向けて
  • 1.田辺市熊野古道「山奥」への道


東北から行こう、という時点で、どう考えても筆者も頭おかしいと思うが。とりあえず行ったルートを解説。
朝、自宅と同じ市内にある空港へ。伊丹行の直行便に乗り、午前11時頃には大阪入り。
ここから、山奥の即売会まで、レンタカーで移動する。
公共交通機関での移動も検討したが、さんざん乗り換えて辿り着いた最寄りバス停から、さらに坂道を上る事15分、という地獄のような条件に心折れ、レンタカーで向かうことにした。

大阪でレンタカー借りることも検討したが、走行距離の負担もきつそうなので、奈良までリムジンバスで移動。
奈良市・大和西大寺駅でレンタカーを借りる。故・安倍総理殉難の地だが、両手に荷物をもっているので手を合わすことはできない。心の中で冥福を祈りつつ、レンタカーの営業所に向かう。
営業所で手続きを済ませ、奈良の山奥に向かう。吉野の山を越え、ひたすら南へ。途中休憩を挟みつつも、4時間ぐらいしたら和歌山に突入。その日は、熊野の本宮大社近く「川湯温泉」に宿を取った。
川湯温泉は、河川敷からお湯が沸く混浴の野天風呂。ラッキースケベはなかったが(当たり前ですw)、星空を眺めつつのんびり体を休める。

翌日朝は、川湯温泉から即売会会場まで移動。
だいたい車で40分ぐらいなので、ここは比較的楽かな?

移動時間をまとめよう。

初日:自宅〜空港バス 1時間
  伊丹行飛行機 2時間
  伊丹〜奈良 1時間
  奈良〜川湯温泉 4時間
2日目:川湯温泉〜会場 40分

…実に、8時間40分の「超長旅」である。
そこまでして、何で筆者は即売会に行かねばいかんのかねw

なお、大阪辺りからならば比較的近いが、車でも電車・バスでも、3時間はかかるだろう。
比較的近いはずの大阪からでも、なかなかの所要時間だ…。


  • 2.世界遺産!熊野古道レストハウス開催の限界即売会


ようやく会場の「N.S.カフェ」に到着。
このカフェ、熊野古道のトレッキングコース上に位置するカフェだ。民宿も併設している。
熊野古道を参詣される皆さんが、普段は休憩がてら立寄るそうだ。外国人観光客も、相当来ているようだ。

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車で訪問するサークルさんは、カフェ併設の駐車場に駐車できる。
ただ山奥のロケーション、駐車場のスペースも狭く、すし詰めにして何とか全サークル分押し込めた感じ。
一般参加者は、路肩駐車で対応せざるを得ず…まあ滞在も短時間で終わるし、車での往来は我々即売会関係者以外には皆無なんで、まあ許容範囲か(汗)

なお、このカフェの中はこんな感じ。各自お察しいただきたいw

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つまりこのカフェの経営者がオタで、自分が運営しているお店で即売会を開催する、という構図である…

サークル配置も、「限界即売会」の風格を感じさせたw
このカフェの屋外テラスに椅子テーブルが並べられ、そこに「早い者勝ち」でサークルには設営をしてもらう。
つまり、昔舞鶴や江田島で開催された「限界即売会」よろしく、サークルに屋外配置を強いるという展開だw
ここで、10サークル分を収容する。

今回の参加サークルは12サークル。残り2サークルは、カフェ建物内の「お座敷」に頒布物を並べる。
あーこれ埼玉県久喜市鷲宮の限界即売会(らき☆すたオンリー)『らき☆フェス』でお見かけしたような展開だなw
(この催事では、飲食店内のお座敷にサークルを無理やり配置させた「前科」を持つw)

こんな感じで、サークルを無理やり配置して、即売会がスタートした。


  • 3.特殊な参加形態の数々


サークル参加は12サークルだが、参加が「試される」即売会なだけに、移動や旅行に楽しみを見出す方が多い。
サークルの半数近くが「旅行系サークル」なのも、ある意味頷ける。

山奥で、近隣にコンビニ・スーパー等の小売店は存在しないものの、参加者が1日過ごせる最低限のインフラは整っており、案外不便はしない。
トイレに行きたくなれば、このレストハウスは巡拝者向けに無料でトイレを開放しており、そちらを利用すればOK。
のどが渇けば、カフェ併設の自動販売機でドリンクを購入できる。
移動販売の露店も登場。そこでお菓子や日用品も購入できる。

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唯一の弱点は、供食機能。これはこの即売会に限らず、熊野古道全般にわたって言えることだが、この地域、飲食店が殆んど見当たらない。
しかし、このカフェは飲食業の許可も得ている。サークル参加者にはお弁当が振る舞われ、長時間お腹を空かせることなく済む。また、「おでん」や「手作りプリン」も、カフェで販売していた。

こんな山奥で開催して参加者来ないよね…と思ったが、意外に和歌山県内各地からの参加者が多かった。(大阪方面からも少数来訪)
ただ、和歌山県もクルマ社会。来訪者はほぼ全量車での訪問。先も申し上げたが、サークル参加者で駐車場が埋まっていたので、一般参加者は路肩の邪魔にならないところに停車してもらい、何とかやり繰りした。
なお1人だけ、【自転車】での訪問者もw これは、熊野古道サイクリングのついでに、即売会にも寄ってくれた、ということだろうかw

最後に、もっと変わった訪問者も上げておこう。

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御坊市PRキャラとのこと。
サークル参加者総出でカメラを構え、即席の撮影会が始まったw


  • 4.今後に向けて


こうして、限界即売会ながら無事に終わった『山奥で同人誌即売会』。
好評を博してかどうかは知らぬが、2回目の開催も企図している。
今回は初回の「物珍しさ」もあり、筆者含め「遠征勢」の参加も多かったが、遠征勢も毎回来てくれるわけではない。
継続を目指すのなら、遠征勢に依存するのは危険だ。

和歌山県は、定期・継続開催される同人誌即売会も廃れ、即売会不毛の地。
たまに即売会が立ち上がるとしても、和歌山市での開催ばかり。
特に、田辺市含む紀南での開催はここ20年皆無。紀南は、超の付く即売会不毛の地だ。

しかし、今回お越しの皆さんは、和歌山県民。特に紀南在住者が多い。
可視化されてないだけで、この地域にも、同人好きのオタクは案外存在する、ということ。
言い換えれば、紀南の同人オタクを掘り起こし、開拓した即売会。そう意義付けられる。
開催を継続するなら、その路線を重んじるべきだろう。


主催氏がほぼ一人で全ての業務を担っていたのも、気になるところである。
お弁当の製造や提供は、主催氏のご家族が担ったが、それ以外の業務は、皆主催氏ワンオペだ。
カフェでのおでん販売、お菓子の販売、委託コーナーでの委託同人誌販売、狭い駐車場の誘導整列…1人10役ぐらいこなす獅子奮迅の働きだが、主催氏に負担がかかりすぎる。もう一人ぐらい、手伝いのスタッフを用意できれば良いのだが…
余りにもいっぱいいっぱいなので、何かトラブルが発生したら、対応しきれずパンクしそうな不安は残る。

駐車場の件も、課題となろう。
今回は、カフェ併設の駐車場で賄おうとしたが、余りにもギリギリすぎる。
可能ならば、他の施設さん(学校・コミュニティセンター等)の用地を当日のみ拝借し、そこを臨時駐車場にできないか。それができれば、主催さんも誘導整列の業務から解放されるだろう。

場合によっては、サークルさんや一般参加者から、運営の手伝いを募っても良いだろう。
いずれにせよ、いかに小規模な即売会とは言え、主催氏の負担が大きすぎる。主催氏の負担軽減策を考えないといけない。